「SESはやめとけと聞くけど本当?」
「エージェントにSESを紹介されたけど、実際はどうなの?」
結論から言うと、「SESはやめとけ」はあながち間違いではありません。
あながちと濁すのは、求職者の求めるものやどこのSESに入社するかで変わってくるからです。
ただ、一つ断言できることとして、
なんとなくでSESを選ぶことは貴重な時間とキャリアを犠牲にしかねないので危険です。
では、貴重な時間やキャリアを犠牲にするようなSESデメリットとは何でしょうか?
この記事では、実際にSESで新卒から3年間働いた筆者の体験談をもとに、
SESのデメリット(=退職理由)と、退職して良かったことについて解説します。
- 新卒でベンチャーSIer(社員数60人程)に入社
- 3年間、システムエンジニアとして従事
- 現在は退職し、WEB業界に転職済み
SESの実態を知ることで、入社後のアンマッチをなくすことが出来ます
SIerに入社した理由
就活エージェントに勧められたから
就活の走り出しが大学3年の就活解禁日と走り出しの遅かった筆者は、
自己分析・業界分析を怠ったまま周りに流されて走り始めた結果、就職活動に苦戦…
書類も面接も落ちまくり行きついた場所は某就活エージェント。
ここで改めて自分の得意不得意をヒアリングされ、その後に紹介されたのがIT業界の求人でした。
どこのエージェントもSESを勧めてきたので、
SESに入社するか検討中の方は、調べてよく考えてから決断してください。
まずは色々な経験を積みたかった
IT業界を志望したはいいものの、情報系の知識は全くなく、
パソコンも調べものをするくらいにしか使ったことがありませんでした。
特にやりたい仕事や身に付けたい技術などがなかったため、
まずは色々な案件や技術に触れて経験を積みたいと思いSESを志望しました。
明確にやりたいことは決まっていない、けどエンジニアとして経験を積みたい新卒の方にはSESは選択肢としてありだと思います。
SIerでの仕事内容
退職の具体的な話の前に、筆者の入社後3年間の仕事内容について軽く触れておこうと思います。
会社や現場によって何を経験するかは様々なので、
一例として参考にしていただければと思います。
【参画プロジェクト】
主に銀行や保険会社の業務システム開発
- 【仕事内容とその期間】
・ 設計 (2ヶ月) -
既存の設計書をベースに内容を書き換えていく作業
- ・ 開発(4か月)
-
言語は、HTML, CSS, JavaScript, VB.net, SQLを使用。
主にフロントエンド開発(ユーザーのパソコン側で動作するプログラム)を担当 - ・テスト(26ヶ月)
-
テスト仕様書の作成(既存のものに倣って作成)とテストの実施
- ・ プロジェクト管理(4ヶ月)
-
進捗管理やお客様向け資料の作成(パワポやエクセル資料)、議事録作成等
書き出してみると明白ですが、圧倒的にテストをやっている期間が長いです(笑)
筆者が所属していた会社は、エンジニアが案件を選ぶような機会はほぼなかったため、
会社に言われるままに案件をこなしていった結果、上記のような仕事内容となりました。
退職を考え始めたきっかけ
異動時面談で経験を浅さを痛感
入社3年目の3月、翌月に現場異動があることを営業から聞きました。
その時アサインされていた現場は2年以上在籍していたため、環境や業務に慣れていたこともあり、
このままこの現場で経験を積んでいきたいなと思っていました。
ただ、エンジニアに異動を阻止する権限はなく…(笑)
淡々と異動の準備が進められ、営業に提案された新しいプロジェクトの面接(面談)を受けに行くことになりました。
そしてこの面談で撃沈。スキルのなさを思い知らされることになります。
設計時はどんなことに注意されていましたか?
設計書なんか、ほぼ流用してたから特に注意してたとかない…
Try Catchには何を記述していましたか?
Try Catchもコピペだから覚えてない…
データベースAとデータベースBの違いはなんですか?
もうその案件は半年以上前の話だから覚えてない(泣)
後日営業から話しを聞くと、
この面談は面談の中でもかなり細かく深堀されているほうだったらしいのですが、
それでも初歩的な質問も答えられない自分の知識や経験の浅さを痛感してかなりショックを受けました。
その時アサインされていた現場では、お客様からもいい評価を頂けていたのですが、
「外の世界ではこんなにも通用しないものなのか…今のままじゃ絶対だめだ」と思いすぐに転職を決意しました。
退職理由
転職を決意してから、自分の理想の働き方をiPhoneのメモ帳に書き出しました。
そして、その理想と相反するものが下記に記載した退職理由になります。
アサインするプロジェクトや工程が選べない
これ、めちゃめちゃ大事です。
簡単に言うと、自分のやりたい仕事が出来ません。
これだけでも私にとっては結構ストレスでした。(笑)
SEの仕事内容は様々ですが、プログラミングのように頭を使うものもあれば、
単純過ぎて脳死状態で出来るような作業もあります。
1日中録音した会議を文字起こしして、ひたすらWordに打ち込んだりしたこともあったな~
やりたいことが出来ない=自分の理想キャリアも歩めません。
筆者は、AIやビックデータなどの今後需要が高まる最新技術に携わるか、
フロントエンドの開発に特化して技術力を磨きたいと考えていましたが、
実際にアサインされるのは、テストがメインの現場やプロジェクト管理がメインの現場…。
理想とはほど遠い案件で、このままでは思い描くキャリアパスが歩めないという不安が大きかったです。
勤務地が選べない
アサインする案件が選べないということは、同時に勤務地も選べません。
- 通勤に関して
-
県を跨いだり、駅から会社まではバスを使わなければいけない勤務地も…。
逆にリモート可の現場もある。(リモートの人うらやましかった)リモートが羨ましくて仕方なかったです(笑)
- 労働時間に関して
-
ほぼ毎日定時で帰れる現場もあれば、常にプロジェクトが遅延していて残業ありまくりだったり、
場合によっては休日出勤、深夜作業などがある現場もあります。※もちろん、これも選べない - 労働環境に関して
-
働くオフィスの広さや綺麗さも運ゲー。
ビルの中にコンビニや休憩スペース・カフェ等がある勤務地もあれば、
執務室のみで休憩スペース等がなく、気軽に息抜きも出来ないようなこじんまりしたところもありました。
筆者が新卒で配属された勤務地はかなり大きく、きれいなところだったため、
カフェはもちろん、催事でご当地の物産展等があったり、
企業キャラクター(着ぐるみ)が遊びに来たりしてました(笑)
一般的な会社であれば、入社時にどんな場所・環境で働くのか分かったうえで入社をすると思いますが、
SIの場合はいつどこに配属されるか分からない運ゲーなので(これが俗に言う『案件ガチャ』)、
勤務地にこだわりがある方にはお勧めできません。笑
筆者はわざわざ遠い勤務地に通う意味を見出せませんでした(笑)
技術力が身につかない
これも正直案件によるかもしれませんが、
少なくとも私の会社や現場の周りでは技術力のある若手はほぼいなかったです。
まず、そもそも開発に携われる機会が少ない。
最初に配属された現場では、1~3年目の若手は1年中ほぼテスト。
更に恐ろしいことにテスト環境に行くと、筆者よりも一回り二回り上のおじさんたちもテストをしてるんですよね…
新人でも出来る仕事をベテランが当たり前のようにやってるなんて、
闇深い…SESの悪いとこが出ちゃってます
また、様々な会社の人間が集まって大規模なシステム開発を行うという性質上、
プロジェクト管理やチーム管理・ドキュメント管理等の作業も重要視されているため、
SEの仕事内容は幅広く、プログラミングなんぞ幅広い仕事のうちの一部に過ぎません。
そして、どんな技術・プログラミング言語を使うかもアサインするプロジェクトによって異なるため、
一つの技術を突き詰めたい方にはお勧めできません。
退職の流れ
退職すると決めたその日に大手3社の転職サイトに登録をし、
最終的にはdodaの転職エージェントサービスを利用して、転職先を見つけました。
転職先を決めてからの退職を考えている方は次のステップが参考になると思います!
最終選考合格後、入社の意志をエージェントに伝えると
入社希望日を聞かれ、その後企業からエージェント経由で採用通知書(入社予定日の記載あり)が届きました。
自分がいつから入社出来そうかは、
事前に下記を確認しスムーズに内定先企業に報告出来るように準備しておきましょう。
①退職日の申し出は、退職の何日前までか(就業規則をチェック!)
②残りの有給は何日分か
但し、法律上は基本的に、労働者側から2週間前に退職を申し出れば、退職可能です。
採用通知書の内容(年収や労働条件)を確認し、
問題がなければ受領の旨をエージェントに伝えて転職先とのやり取りはひとまず完了です。
(入社に関する連絡は、その後企業の方から別途連絡が来るので適宜対応)
入社日が決まったその日に、課長へ電話で「お話があるのでお時間頂けますでしょうか」と連絡を入れました。
一般的には、直属の上司に退職の旨を伝えるようですが、
私の場合は配属先に同じ会社の人間がいなかったため、一番連絡のやり取りが多かった課長に連絡をしました。
コロナ禍ということもあり、終業後にZoomで話し合いの場を設けて頂き、
そこで「退職いたします(断言)」と伝えました。
確実に退職するためには、
”相談”ではなく”自分の意志”を伝えるようにしましょう
私の場合は、理解のある優しい上司だったため、特に揉めたりすることもなく了承して頂きました。
客先常駐の場合、後任の人材探しが必要な場合もあるため、出来るだけ余裕を持って退職の申し出をするようにしましょう
退職日が決まれば、あとはいつも通り日々の業務をこなして最後の日までやりきるだけです!
私が所属していた会社は、営業が現場へ退職の旨を伝えてくれるため
プロジェクト内ではほとんど退職の話はせず、最終日までほぼいつも通り過ごしました(笑)
もちろん作業の引継ぎは必要なため、業務の合間を縫って引継ぎ資料を作成したり、
最終週は後任の方に作業を教えたりしていました。
私がやっていた仕事っていくらでも代わりが利くんだな~と思いましたね(笑)
有給消化が出来るかどうかは会社によるかと思いますが、
SESの場合、出向先のプロジェクトの都合もあるためいきなり何日も休むことはなかなか難しいです。
あらかじめ退職のプランを考えて、計画的に有給を消化するか、
退プロ(プロジェクト離任)後にまとめて消化できないか等上司に相談してみましょう!
プロジェクトの最終出勤日は端末等の貸与物の返却やデスクの掃除、挨拶回りで1日が終わります。
お世話になった方々へ、最後の挨拶を忘れずに行いましょう。
※後任の方がいる場合はその紹介も忘れずに!
退職の一連の流れを話してきましたが、実はここまで社内の手続きは何もしてません。
月末の最後営業日に、下記を持って本社に出社。
- 退職届
- 印鑑
- 社員証
- 名刺(もらったけどほぼ使ってない)
- 健康保険証
- 菓子折り
本社で退職時の書類にサインをし、年金手帳を受け取り、住民税の手続きをしてもらって手続完了。
ここまでの所要時間は30分ほどです。
その後は、本社の内勤の方々に一人一人挨拶をし、
普段ほとんど会うことも話すこともなかった社長に久々にお会いして、ありがたいお言葉を頂き、
「お世話になりました」と最後のご挨拶をして計1時間くらいで退勤。
意外とあっけなくて、
退職ってこんなに簡単に出来るんだと感じました(笑)
退職するかどうかの意思決定は大変だけど、
手続き自体は簡単で事務的なものなんだね!
筆者の場合は、退職の話は社内で極力しないように言われていたため、
「退職のご挨拶」というようなメールも送っておらず実質サイレント辞めになってしまいました。
たまーに同期と連絡を取った際、「○○さんが辞めたらしい」というような話を聞いていたので
おそらくみんなサイレント辞めにだったんだと思います(笑)
(同じ会社でも、同じプロジェクトにアサインされない限り業務上ほとんど関りがないので、誰かが辞めても気付きません)
とは言っても無言で去るのはあれなので、
お世話になった方には個別に感謝の気持ちをお伝えすると良いと思います。
転職できた?
【結論】出来た。けど大変だった。
筆者のありのままの転職活動の結果をお見せします。
お見苦しい結果ですが、さらします(笑)
応募数: 44社
(SI系) 10社
(WEB系) 34社
書類通過:
(SI系) 6社
(WEB系) 4社
内定数: 1社
いや~厳しい戦いでした…(笑)
筆者は、技術力を身に付けたかったのと、
最終的にはフリーランスのような自由な働き方が出来ればいいなと思っていたため、
副業や独立に繋がるスキルが身に付けられそうなWEB業界を志望していました。
ただ、SI時代は、HTML, CSS, JavaScriptを使ったコーディングを計3~4か月間ほどしていたくらいで、
がっつりプログラミングを経験していたわけではないため、
スキル重視のWEB業界の求人には歯が立たず片っ端から落とされる始末…(泣)
分かってはいましたが、
自分のスキルのなさを痛感して落ち込みました…(笑)
持ち駒がなくなりかけたその時…
奇跡的に1社だけ内定を出してくれた企業があり、無事希望のWEB系企業に転職することとなりました。
少し話は変わりますが、転職時の面接で一番最初に聞かれる質問ってなんだと思いますか?
なんだろう?就活の時は、自己紹介を沢山練習したなぁ
転職活動時に自己紹介はほぼ聞かれません(笑)
8~9割は「職務経歴」について聞かれます。
中途採用は即戦力を求められているので、前職でどんなことを経験して、どんな実績があるのか、
エンジニアの場合は、使える言語やフレームワークの種類、そういった質問がかなり多いです。
じゃあこの戦場に、へっぽこSEが参戦するとどうなるか?
まったく歯が立たず、即死します。(笑)
この結果を見て明らかなのは、
豊かな経験を積めないSESは気付かぬうちに自分の市場価値を下げているということです。
テストばっかりやっていた筆者は、いくら現場で優秀なテスターになったとしてもその現場でしか通用しなかった。
会社に言われるままに様々なプロジェクトの穴を埋めて、自分の身を削ることはあっても、
自分の身にはなっていなかったと、転職を考えるようになってようやく気付きました。遅いですよね(笑)
退職して良かったこと
自分が納得した勤務地で働ける
退職前 | 転職後 | |
---|---|---|
通勤時間 | 1時間半 | 50分 |
電車の乗り換え回数 | 1回 | 0回 |
徒歩(駅~会社) | 20分 | 3分 |
出勤回数 | 週5日 | 週1日(その他はリモート) |
出社回数が週5→週1になったのは大きいね!
これは本当に楽になった!
朝もゆっくり寝れて、夜も勉強したり趣味をする時間が増えて最高
自分が納得した仕事内容に専念できる
退職前 | 転職後 |
---|---|
アサインする案件によって仕事内容は異なる ※案件はもちろん選べない | やりたかったフロント開発が出来ている (客先常駐ではないため、今後も仕事内容が変わることはない) |
筆者のように、明確にやりたいことがある人にとっては、
色々やらなければならないSEの仕事は不自由さを感じてしまうかもしれません。
スキルを身に付けられる
退職前 | 転職後 |
---|---|
案件によって任される仕事や使用する技術が異なり、 浅い知識しか身につかない | 会社を選ぶ時点で、フロント開発が出来る会社を選んだため、 入社後も特定の分野に特化して経験を詰めている |
技術を身に付けたい方にSESはお勧めしません。
自社作業の時間が減った
退職後 | 転職後 |
---|---|
終業後に課会やその他勉強会が開催される | 終業後の作業はない (会議や勉強会等はあったとしても終業時間内) |
これ、若手の中では結構不満を持っている子がいました。(笑)
月に数回、現場の仕事が終わった後に1~2時間程の会議があるのですが、
「やった~~仕事終わった~~!!」のその足で誰がわざわざ本社に戻って会議をしたがるのか…
月に数回ならまだしも、年次を重ねれば重ねるほど会議や研修・勉強会などの
定時後の作業が色々と増えていきます。(もちろん残業代はでますよ)
そしてその会議のための資料作りや準備も含めたら割と結構な作業量です。
筆者はこういった時間でさえも、出来れば自分の勉強時間に回したいと思っていたので、
今はそれがなくなってノンストレスで定時後を過ごしています(笑)
まとめ
以上が筆者の退職エントリでした。
結論を超絶簡単にまとめたのがこちらです。
入社理由:色々経験してみたかったから
退職理由:やりたいことが見つかったから
経験としてSESに入社してみるのは、選択肢として全然アリだと思います。
学べることも多いし、世の中の色々なシステムの開発に携われるのは割と貴重で面白い体験です。
但し、やりたいことが明確にある人には向かないということと、
もしも入社するのならば、その時の企業選びを慎重に行うこと、
入社後も定期的に自分の市場価値が下がってないか、自分の幸福度が下がっていないか、確認することをおすすめします。
筆者は結果、市場価値が上がるような経験が出来ず、
案件ガチャのような運ゲーでキャリアを積んでいくのはリスクが高いと思い脱SESを目指しましたが、
企業によっては案件を選べたり、会社が資格取得や技術取得の支援をしてくれるところもあるため、
同じSESでも会社選びがその後のエンジニア人生をかなり左右してきます。
これからSESに飛び込む方はくれぐれも慎重に。
今SESでもう死にそうな方は悩む必要もないです、
一つでも多く自分の理想が叶う会社を見つけるために是非転職活動をしてみてくださいね。
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